がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

推し活のススメ

 

スピードが求められる現代。

 

なんでも早いのが賞賛される時代です。

時短仕事術、最速空腹チャージ、駅から徒歩0分、5分であなたも腹筋バッキバキなどなど。

タイムイズマネー。時は金なり。効率。最短。

人生は生き残りを賭けたサバイバルなんだそうです。

 

しかし、そんなに急いでどこにいくんでしょう。

 

足元に咲いている花の名前も知らないくせに。

 

と、知ったかぶって世の中を斜めに見ながら、

インスタント焼きそばの3分を待ちきれずに、

若干硬めの麺を食べながら2倍速でドラマを観ている私。

 

もはや台詞がラップバトル。展開が早すぎて、別の意味で目が離せない。

瞬き厳禁、もはや目がカピカピのドライアイ。

ドラマを楽しんでるのか、ただ消化しているのか自分でもわからなくなってしまいます。

 

といいつつ、やはり時短は見逃せない私。

短縮した時間を何に使っているのかと問われると、「?」がついてしまうのに。

ああ、何か大きな力に操られている陰謀論を疑ってしまいます。

 

 

ある日の夕方、スーパーのレジ。

 

私のカートかごには、ここ2、3日の食材が詰め込まれています。

ニラ、ねぎ、豚コマ、モランボンの塩タンメン鍋の素などなど。

 

あら、やだ。

お鍋以外ありえない買い物レパートリー。

本日の我が家の食卓事情がダダ漏れでございますね。

こりゃ、ちょっとお恥ずかしいなぁと思いつつ、レジの様子を伺います。

 

お客さんが1人しかいないレジでも、「これ何日で食べ切るつもりでしょう?」と思わず聞きたくなるほど、カゴいっぱいに買いまくっているお方がいるところもあれば、年金生活でおぼしき質素に暮らされている買い物わずかなお爺さまが、セルフレジの洗礼を受けて渋滞となっているレジなど様々です。

 

ふむ。ふむ。と、まずは並んでいるお客の動向はつかめました。

 

次にレジ担当の顔ぶれをチェック。

いつもの見知った顔からニューフェイスまで。

なかなかのバラエティに富んだ本日のシフト配置。

 

私がいつも狙う千手観音と崇拝する音速レジのおばさまは本日お休みのようです。

 

以前なにかの雑誌かなんかでレジ担当の方が、スーパーは誰もが毎週通うところなのでレジ担当は誰が早く、誰が遅いのか、お客さんは結構シビアに見ていて、自分のレジ待ちラインよりもレジが早い人のラインが多少混んでていても、みんなそちらに並びたがると。

 

それが地味に悔しかったと。

レジは毎日が戦いなのだ。

と言っていたのを思い出しました。

 

 

恐るべし、レジの仁義なき戦い

レジに並ぶ私たちはまるでポールポジションを狙うF1ドライバー

最短のコース取りで、誰よりも早いチェッカーフラッグを目指し、ベストポジションを争うのです。

 

レジの手捌きでスパコンばりにレジ待ち時間を計算するシニアのオバちゃま。

 

レジ待ちの買い物カゴから、1人当たりの作業時間を割り出す子持ちのお母様。

 

あまりの猛者たちに、人生初の混んでいないセルフレジに挑戦しようか悩むおじちゃん。

 

強者が揃った今日のレースも激戦模様のようです。

 

 

殺気だったレジ待ちの列を横目に見ながら、

こんなんではいけないと意を決し、今日の私はひと味違うと奮起。

 

ひときわ商品のスキャンスピードが遅いレジを発見。

ぎこちない商品の扱い。

明らかに新人。明らかに不慣れ。

30代後半、2人のお子様を持つ今週レジデビューのお母様とお見受けしました。

そんな彼女にレジをお願いすることとしました。

 

 

もはやこれは推し活。

 

レジ担当の方を大事に大事に育てて、いつか青い空へ飛び立てるよう私が微力ながらお手伝いするのです。

 

私の前に1名のレジ待ち。

 

その間にポイントカードを用意、財布、マイバックと、少しでも時間短縮のお手伝いをさせていただき、ちょっとでも彼女の自信に繋がればと私もスタンバイ。

 

前のお客さんの会計スタート。

「本日の特売キャベツが1点です!」

「人参1本です!」

「お会計2,340円です!ご精算はセルフでお願いします!」

 

新人さんならではの丁寧な言葉遣い。

運動会で我が子の走りを見守るかのような、精算まで見届ける暖かい眼差し。

 

素晴らしい。微笑ましい。

 

コンビニのレジの兄ちゃんが言う「あーりしたー。まっしーくせー(ありがとうございました。またお越しくださいませ)」とはえらい違いです。

 

いざ私の番となり、はいはい最初にポイントカードねと出そうとしたら、そこには某コンビニのポンタ君の青いカード。

 

 

ありゃ、カード間違えた。

 

 

ここのポイントカードは…と財布を見直すも、カードがなかなか見つけられず焦る私。

容赦無く私の後ろにレジ待ちの列が増え続ける恐怖。

後ろで怪訝そうに見るお客さん。

暖かい眼差しで私を見守るレジの女の子。

こちらの様子を伺い、ため息と共に違うレジラインに移動するお客さん。

 

焦って出せるカードも出せなくなり、こんな数秒で泣きたくなる私。

レジ待ちは5Gも真っ青の高速ラインということを思い知りました。

いやはや大変な時代になりました。

 

私、生き残れるのかなぁ。