がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

我が家で繰り広げられる駆け引き

今日のおかずは「ほっけ」です。


妻からのメッセージがスマホに届いたのは昼過ぎ。

久しぶりの魚。
幼少期、釣り好きの父に魚を嫌というほど食べてきた私と骨を取るのが面倒くさい妻の食卓では、魚の登板率はかなり少ない。

なので魚が出た時点で、妻の魚をそのまま食べれるくらいまで私が骨を取ってあげるのがいつのまにか暗黙のルールとなっています。

介護じゃねぇんだから。あなた自分でやりなさいよ。

と妻に言っても「だって〜」とアラフィフの女がクネクネ、モジモジ。
やめなさい。子供が見てる前で。
というか、その手が通じるほど私も世間も年齢も甘くはない。

とりあえず息子には
人前で飯を食えるくらいの人間になりなさい。
じゃないと偉い人と一緒に飯食えないぞ。
いいモン食えないぞ。
というモットーの元、幼少期から骨の取り方をレクチャーしていたので、息子はスイスイ骨を取っていく。

片やクネクネ踊りを横目にせっせと自分が食べない魚の骨を取る私。
まあ、いつものことだしなと今夜の夕食を想像していたら、妻からのメッセージを受信。


「お客さんと打ち合わせを兼ねて食事になったので、今日晩ご飯食べません」とのこと。


なんと。
まあ骨を取る労力が半減した。よしとしよう。


「了解です。美味しいもの食べてきてください」と返信。
OK!と親指を立て満面の笑顔を浮かべたウサギのスタンプが送られてきました。

夕食はホッケを息子と制覇。
久しぶりの魚はやはり美味しい。
体にもいいし、日本人はやっぱり魚ですよと息子と二人、大満足で夕食終了。

22時30分。
妻はまだ帰宅してないが、眠くなったので寝床の準備。
歯を磨いて、布団に入りながらベッドライトの明かりで本を読む。
いつでも寝れますよ状態の時に玄関から物音と

「ただいまー。ピザあるよー」と妻の声。

22時過ぎにピザ。
しかも今まさに寝るタイミングで、ピザ。
太るだろう、ピザ。
歯もまた磨かなきゃいけない。
布団の温もりも捨てがたい。

が、しかし。

久しぶりのピザは捨てがたい。
しかも今日一緒に食べたお客さんは私も面識あるお金持ち夫婦。
きっといいところのピザに違いない。

眠いよ・太るよ・ヤバイよ・寝るルーティン初めからだよ<<<<ピザ

ピザの圧勝。
息子も自分の部屋から出てきてワラワラとピザに群がる野郎ども。

トロトロチーズにオリーブ、パプリカ、フレッシュトマト、生マッシュームがこれでもかとトッピング、ピザの耳はプクんと膨らんで、白い粉とちょっとの焦げ目がついている。

見たらわかる、たっかいヤツやん。
絶対美味しいヤツやん。

「お土産にって、もらっちゃった。美味しそうだよね」と妻は興奮気味。
「でも私はお腹いっぱいなのー。もう食べれなーい」
「今日はイタリアンでー、シャンパンからワインから久しぶり飲んだー、でねー」

延々続く食事自慢をBGMに

「ほうー」


「へえー」

と気が入っていない相槌をうちながら野郎二人はワラワラとピザをむしり取る。
もはや人間に群がる腹ペコのゾンビ。
息子と頭をぶつけ合いながらピザを取り合います。
いいモンの食べ物を残して次の日に残った確率は我が家では限りなく低く

「あると思うな。宵越しの金と昨日のご馳走」

と楽しみに取っておいた数々の食べ物や激ウマ地域限定お土産を妻のワッハッハと笑う高笑いと共に失ってきた環境で育てられた私たちは今あるチャンスが限りあることを学習しています。

「映画と一緒に食うピザは格別なのだ」と息子は3ピースを皿によそう。

今から3ピース?
今から映画?
今現在23時。
いつ寝るんだ、お前。

まったく時間の計算が合わないのに、意気揚々とピザをゲットし部屋に閉じこもる息子。
この時間からの3ピースって。
若さってスゲー。
映画はスマホでこれから観るらしい。
まあ、今のうちだからと黙認することとします。

私も遅れてはならぬと残った5ピースのうち、1ピースを食べてみます。
それでもかなりのボリュームです。

うますぎる。
この背徳感。
なんで夜遅い食べ物はこんなにおいしいんだろう。
ピザ万歳。自由万歳。人間万歳。

妻は「お腹いっぱい。私は食べないから」を連呼。

わかった、わかったといいつつも、あんまり言うので、これはもしかしたら話のフリで本当はピザを食べたいのかもしれないと思い


「このピザ達に私は明日会えるのでしょうか?」と聞いてみる。


妻は「今はお腹いっぱい。今はね」とニヤリ。


彼女の話は伏線だらけで先の展開が読めません。
今はねの意味とは。
お腹いっぱいは真実なのか。
繰り広げられる心理戦。
ピザをかけたライアーゲーム

果たしてピザ達は今晩このサバイバルな家を生き残れるのか。

明日の朝日を浴びることはできるのか。

先の展開にドキドキしながら、明日の体重計にもドキドキしながら今日もぐっすり眠ります。