がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

ビートを刻む体

 

 

 

仕事をひと区切りして昼食を食べた後、

 

「ちょっと外出します。病院に行ってきます」

 

と中座。本日は循環器科で心臓の定期検診です。

 

 

病院に着くと、珍しく診察待ちの患者さん8名がズラリ。

 

あれ?

 

いつもは待ち人2、3人で、診察午後イチで呼ばれる私ですが、これはみんな診察待ち?

と、ただならぬ雰囲気を察知。

 

案の定、お先に待ってる方々が次々と呼ばれていきます。

一人当たりの診察は5分から10分くらいの早いペースで終わっていくのでひと安心です。

 

まあ、私も「特に変わった様子はないです」と一言の報告で終わってしまうので、心臓というのは調子が悪い現行犯じゃないと、なかなか判断しづらいのかな?と素人考えをしながら、診察の様子を眺めます。

 

予約時間から1時間後、ようやく名前を呼ばれ診察へ。

 

「いやーお待たせしてすいません。患者さんが押しちゃって」と恐縮する若ドクター。

 

「いえいえ、大変ですねー」

 

「お変わりありますか?」

 

「あ、大丈夫ですー」

 

「あ、了解ですー」

 

あ、ヤバイ。終わっちゃう。

1時間待って診察1分で終わっちゃう。

まだ待ってる人がいるのでこれで終わってもいいのですが、流石にと

 

「あのー、せっかくなんで質問いいっすか?」

 

「もちろん。もちろん。何ですか?」と、どこまでも優しいドクター。

 

「この前ね。服の上からでもわかるくらい、ポコんポコんって心臓から音が聞こえたんですけど、なんなんですかね?」

とつい最近、数日間起こった現象を説明。

 

鼓動の音が服を着ててもわかるくらい、大きな音でポコンポコン鳴ってる症状が起きていて、あとは特に痛くもないし、それ以上でもそれ以下でもないので大事ではないのですが、ちょっと気になったので質問をしてみたのです。

 

ドクターが「あー、それって前にも言ってましたよね?どんな音ですかね?」とカルテも見ずに、本人も覚えてない事を言い出す驚異の記憶力を発揮。

 

いやーさすがだなぁ。

私のように記憶力を無駄に使う人間とは大違いです。

 

しかし今回の私はひと味違います。

「でね、動画をね。スマホで撮ってみたんです。このたび」と証拠を提示する私。

 

「おおー聞きたい。聞きたい」と身を乗り出すドクター。

 

もはやインスタで盛り上がる高校生のようにスマホを囲む二人。

えぇーそんなぁ見たいですかぁ?しょうがないなぁー感を出しながら、再生を押します。

 

ポコんポコん鳴ってる音を、ドラムのように机を叩きながら再現するドクター。

なんかミュージシャンみてー。

奏でてる。なんかリズム刻んでる。

手で机を叩きながら若干、首を前後に振ってポコん音でノッてるように感じる。

やべー、ドラマーみたいだー。

 

「なんかこう、ダン、ダン、スタダン、ダダン、ダンみたいなリズムですね」と言いつつ、ドクターが机を両手で叩きながらポコん音を再現します。

 

え?なに?

もう解説がバンドマン。

どっかの密着番組で観たレコーディングスタジオで新曲作ってるどこかのアーティストの光景が脳内でリフレイン。

 

でもリズムは明らかに不規則。

これっていわゆる不整脈ってヤツでは?

新しいビートってやつなの?

 

診察室はポコん音を聞きながら、首を前後に揺らしながらリズムを刻む若ドラマーと肩を上下に揺らしてリズムを取るアラフィフDJ。

二人まとめてハタから見たらヤバい光景に。

 

「この音と脈って同じリズムでした?」と首を揺らすドクター。

 

「ああー、そこまでは確かめてなかったなー」と肩を揺らしながら悔しがる私。

 

「脈と違ってたら、心臓が原因じゃない可能性があるんですけど。あとは体の角度で心臓と皮膚の距離が近かったとかが考えられるんで、まあ今度鳴ったら確かめてみてください」

 

おおーそうなのか。ラジャー!ありがとうございます!

すいません。それだけです。あとは異常ないです。すいません。忙しい時に。と、ひと通りお礼を言って、この件は終了。

 

ドクターが「じゃあ、次も3ヶ月後ってことで」とパソコンをカタカタ、予約表をプリントアウト。処方箋にハンコと手続きをしてくれます。

 

 

あ、そういえば今日はナースがいない。

以前までは診察室にはナースがいて、ドクターは診察だけで予約表の手配もナースがやってたのに。

 

私が「これからドクターが予約表のプリントアウトまでやることになったんですね」と驚くと

 

「いやー医療の現場も効率化というか。とうとうその波が来まして。それで遅くなってるんです。これも時代ですね」とせわしなく書類を用意するドクター。

 

お互いに頑張ってこーと励まし合いました。

便利な生活や効率化というのは、なかなかついていくのが大変です。