「トランプ、買ってきた」
唐突に妻は家に着くやいなや、高らかに宣言。
呆気にとられる私と息子。
「夕食後はトランプ大会ですから」
妻はさも当たり前のように言い放ち、夕食の準備にとりかかっています。
どうなってんでしょう、我が家。
何がどうなってんでしょう、私たち。
そんなにトランプ好きでしたっけ?私たち。
?マークが多すぎて、私も息子も「なんで?」しか言ってない。
思い出しても我が家のトランプ登場回数といえば、ここしばらくなかったはず。
まあまあ、息子が小さい頃に「これがトランプというものだよ」とお披露目し、キャッキャキャッキャ言いながら、トランプの真似事した時ぐらいしか記憶がない。
どうした妻よ。
何か仕事で嫌なことがあったのかい?
トランプに現実逃避しなきゃならないほど、ひどい出来事だったのかい?
不安な目で私を見つめる息子。
やめて。自分の親をそんな目で見ないで。
大人って大変なんだから。大人って頑張ってんだから。
だから、今日だけは許してあげて。
でも。でも。
息子、そんな目で父を見るな。私も不安でいっぱいだ。
これから、この家で何が起きるのー?
心なしか言葉少ない夕食の後。
神妙にテーブルを囲む三人。
テーブルの上には、これまた神妙な顔つきの箱入りトランプ。
ジッとトランプを見つめるなか、息子だけが「本当にやるの?」という目でキョロキョロしています。
息子よ、トランプは勝負事。駆け引きはすでに始まっているのだよ。
勝負師は堂々としてなければならないのだ。
ここは父として、夫として絶対に負けられない戦い。
そしてそれは妻も感じているらしく、無言で箱からトランプを取り出し、
「種目はババ抜きです」
と高らかに宣言。
「もしかして、この前テレビで、はいってたやつ?」と息子。
「そー!観たらやりたくなっちゃってねー」と急にテンショントップギアの妻。
どうやら番組の企画でババ抜きが放送され、それを観た妻が奮起。
ババ抜きやりたさに、仕事途中に100均に立ち寄り、トランプを購入したとのことでした。
その番組は確かに私も一緒に視聴し、ババ抜きの奥深さを知った俊逸の企画でした。
「ならば!」とその企画で採用していたルールを今回、我が家でも適用することにしました。
種目:ババ抜き
参加メンバー:私、妻、息子の3名
特別ルール:
「シャッフルタイム」という権利を1人1回持つことができる。
権利は好きな時に行使できる。
権利を行使した人がサイコロを振り、でた数分、時計回りに全員が手持ちカードを回していく。
つまりジョーカーを持っている人がシャッフルタイムを行使した場合、サイコロを振って仮に「1」が出た場合、左隣の人に自分のジョーカーが入った手札が渡り、自分には右隣の手札が渡るということになる。
注意しなければならないのは今回は参加人数が3名なので、サイコロの目が3か6だった場合、自分の手札は1周回って自分に戻ってくることになる。
奇跡的に我が家にあったサイコロを見つけ出し
それでは、いざ勝負開始です。
カードを配って、同じカードを捨てて、はいスタート。
ババ抜きを真面目にやるというテーマのもと開催されているので全員、目が真剣。
罰ゲームは今日の夕食の食器洗い。
ここは今までの人生経験をフル回転して心理戦に突入です。
利き腕でカードを引き、そのまま手持ちのカードの一番右側におさめる時。
→ジョーカーではない可能性が高い
カードを引いて手持ちのカードにおさめる時、真ん中にいれて一旦カードを揃え直す。
→ジョーカーの可能性大。容疑者かくてーい
カードを引かれた人が、一瞬ニヤッとした時。
→自分の思惑がはずれた自虐的な笑いか、トラップが見事に決まった挑発的な笑いか、その後の展開で予想すべし。
自分なりの解釈のもと様々な駆け引きでカードを抜き差し、抜き差し。
巡り巡って私にジョーカーがきた際には、声高らかにシャッフルターイム!と叫び、サイコロをふるも無常の3。
ノオオォォオ!!!
ジョーカーが「ただいま」って顔してる。
そのジョーカーのニヤついた顔が一番イラッとくる。
優勝はシャッフルタイムを使わずして息子、2位は妻、3位、私。
思ったよりも盛り上がらず、7並べに種目変更しました。
昨年出張先のホテルで同僚とやった7並べでパスする度に酒一気という地獄のようなルールで、酔って潰れるかカードをなくすかの2択のみという悪夢のような無限ループでやろうとしたけども、息子が未成年ということで却下。
淡々とゲームをこなし、お互いの性格の悪さが再確認できたところで終了です。
ま、今日も我が家は平和だね。