「がん」の内定をもらって、とりあえず妻へ連絡。
心配性の妻であるため、あまり大袈裟にならないように注意しました。
「やっぱり、がんみたい。でも初期の初期で手術して取れるみたい」
「初期だったらいいけど。とにかく大事にならないよう祈ってます」と返信が返ってきました。
一人息子にも、とりあえずカミングアウト。出てきた言葉が、
「え、俺もがんになるの?」
がんは風邪じゃねぇから、うつりません。
ただ私の父もがんだったので、がん家系というヤツかもしれん。今すぐどうこうではないが、将来気をつけるよう忠告をしました。父にできることといったら、これぐらいなもんなんですね。
一番言いづらかったのは母親でした。父はがんですでに十年以上前に他界しているのですが、やはり自分よりも子供が生き死にの病気にかかるというのは辛いものだろうなと私も子供を持つ親ですから、そのへんを察しつつかなりオブラートに包んで報告しました。
母はうつ病になったことがあるので、これをきっかけに再発しないよう、そっちのほうが自分の病気よりも心配で「とにかく、大丈夫だから」を連呼してたと思います。もはやどっちが手術をするのかわからないくらい「なんでもないから」を一生分言いました。
数日後PET検査を実施。検査着に着替えて、エレベーターで地下に移動、軽い問診と注射を経て、秘密基地みたいな白い壁が続く廊下にあるリクライニングチェアがある薄暗い部屋に通され、安静に。
スマホ持込みもTVも、音楽も全て禁止のなーんにもない部屋で、ひたすら1時間ぼーっと過ごし体をニュートラル状態にもっていき薬を行き渡らせます。
ボーっとするのは得意技。気がつけば名前を呼ばれて機械に横たわり、
ウィーン、ウィーン
はい、終了です。もう検査をする人、準備をする人の作業量と受ける側の作業量の落差がすごい。こっちは寝てるだけ、むこうは正確無比な作業手順でテキパキこなしていく。
いや〜医療従事者の皆様、本当にお疲れ様です。
MRI検査も造影剤を投与しながら機械に横たわりのウィーン、ウィーン。
この造影剤はなかなかのもので、検査前に造影剤を投与する管を腕にぷすっと刺されながら、看護婦さんから造影剤の説明で
「熱いモノが入ってきますぅ」
と言われると、おおぅ♡とちょっぴり興奮してしまう中年男子だったのですが、本当に温かいものが流れ込んでくる感覚があり、少し感動しました。あったかい感じも、ものの数秒でおさまっていきます。
検査が終わると10分くらいの安静と造影剤を体外に出すために水分を多めに取るよう説明されて検査終了。
数日後、もろもろの検査結果を聞きに妻と来院しました。
今回の検査結果でわかったのは、腫瘍は悪性であること、肺がんのなかで肺腺がんと分類されるものであること。肺がんの種類では一番ポピュラーなものであること、タバコを吸わない人でもなりやすい肺がんであること、ステージの分類はステージ1bであること、血液検査でもPET・MRI検査でも転移は認められないことから、手術をして切除による完治を目指すこと、手術になるので呼吸器外科へバトンを渡すことになること等々が告げられました。外科のお医者さまからも簡単な説明を受けて家族同席のがん告知は終了。
あとから振り返ると、これがいわゆる「がん告知」という場面ですね。
案外あっけないもんだなあと思いました。ドラマでよくみる
「なんで、俺がガンなんですかぁ!助からないんですかぁ!」と泣き叫ぶ患者。
くっと顔を背け歯を食いしばる医者。
「一緒に乗り切りましょう!」
ガシっと硬い握手を交わす医師と患者。
みたいな熱い情熱がぶつかり合う場面も想像してたのですが、現実は淡々とクールに過ぎていきます。実際、私も「はい」「そうですね」の二言をリピートしていたら終わってしまいました。まぁ、ステージ1なので、それほど大騒ぎするほどのものではないでしょうしね。普段、バラエティ番組の再現ドラマでも号泣するくらい泣き上戸の妻も泣きもせずに説明を「うん、うん」と冷静に聞いてました。
後日改めて外科のお医者さまから家族同席で手術の説明がありました。
術式は体に負担が少ない胸腔鏡手術(脇腹に5cmほど小さく切って内視鏡を入れて、モニターを見ながら手術する)を行い最低限の傷で肺を摘出、腫瘍は2、3センチだけど左肺半分を切除して、周りに転移しているかもしれない可能性も取り除く。術後の生活に影響はほぼない。手術予定時間は3時間30分。術後の経過観察を含めて2週間の入院予定。術中術後に突発的な事故例も極々稀にあるとネガティブな情報もお話いただいたうえで、
「じゃあ、頑張りましょうね」ということで終了となりました。
健康保険の高額医療費の手続きもして、入院手続きを開始。入院経験のある方から絶対個室がいいというアドバイスもあり、贅沢かなと思いつつ個室を希望。差額1日4千円。
人生初の入院当日は妻も同行し、いざ病室へ。
持って行ったのは、
シャンプー、リンス、ボディソープ(100均のボトルへ移し換え)
バスタオル、フェイスタオル、あかすり、歯磨き用コップ、歯ブラシ、歯磨き粉、
耳かき、爪切り、飴玉、ティッシュ、ウエットティッシュ、ボディシート、洗面器、
フェイスシート、スプレーしてシャンプーできるヤツ、イヤホン、スマホ、ごみ箱、
スリッパ、ノートPC、モバイルwi-fi(レンタル)暇つぶしの小説、着替え、
レジ袋的なヤツ、小さい時計、ハンカチ、ポケットティッシュ、ぽかぽかするアイマスク、
スプーン(大・小)、フォーク、はし、食器いれるきんちゃく袋、お菓子数種
これくらいだったと思います。
スリッパはユニクロのルームシューズを履いてました。病院内結構検査などで歩くので、歩きやすいのがいいと思います。脱げやすいスリッパとかだと、色々ストレスかかるかも。
ボディシート、フェイスシートはよくあるスースーするメンソール系とかがいいと思います。初夏だったので特にスースーを求めましたね。匂い付きとかだと後で書きますが抗がん剤やってる時、匂いに敏感になってちょっと辛いかな。病院でも使い捨てボディシートをくれましたが、独特の匂いもあって市販のスースーするほうがいいかなーと思いました。
スプレーしてシャンプーできるヤツの商品名はググってください。手術後のお風呂入れない時、結構助かりました。頭はやっぱり匂ってくるので、気が滅入ってくるんですよね。妻のチョイスでした。ナイスアシスト。
一番使うのはボックスティッシュ、レジ袋(ごみ箱にはめたり、洗濯物いれたり、なにかと使いました)だったかな。何気につめ切りとか、切りたいときにあるのはストレスフリーでしたね。
食事によってですが、スプーン(大)はカレー系とかの食事が出てきたときに、スプーン(小)はゼリーとかプリンとかの時に使いました。登板回数はそれほど多くはないですが、大きいスプーンでゼリーとか出てきた時、なかなか難しい時もありましたね。
小さい時計はTV棚のうえに置いてベッドから見えるようにしてました。
スマホ見れば時間わかるじゃんという意見もあるとは思うのですが、寝付けない時とか、ふっと今何時だろうと見るときに時計があるのは何気によかったと思います。夜は消灯早いですしね。
個室だったので病室にはシャワールームがあって洗面器は使いませんでした。一番かさばるものだったので、持ち帰りのバッグの幅をとって大変でした。
コロナでお見舞いは禁止で看護婦さんを介しての着替え差し入れは自由でしたが、妻もフルタイムで働いていて差し入れ受付時間も限られていたので、事足りるように着替えは多めにもっていきました。
これから入院される方の参考になれば幸いです。