がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

ボールの行方

 

 

サムライブルーたちが泣いている。

 

PKといえば、いつも思い出すのが息子のPKです。

 

あれは息子が小5のサッカー県大会。

息子が加入しているサッカーチームは地元ではなかなかの強豪チーム。

小学1年生から同じチームでサッカーをやっている息子の世代は、そのまま誰も脱落することなく小5で開花。

 

築き上げたチームワークと能力が高いチームメイトにも恵まれ(メンバーの1人はJリーガーになったほど)破竹の勢いで数々の地区大会を優勝しまくり、今大会も優勝候補でした。

 

うちの息子もDFとして天性のサッカースキルがないながらも、走って、体を当てて、傷だらけになりながらも体当たりで勝負に挑んでおりました。

 

 

勝戦

 

 

激しいシュートの打ち合いと固い守備を繰り返しながら、後半終了で延長戦。

しかし延長でも点が入らず勝負はPKとなりました。

 

小学校のサッカーは8人制なので、PKは5人蹴ってそれでも勝負が決まらなければ残りのメンバーがシュートするのですが、息子はシュート力がないので、いつも最後の一人でした。

 

PKは敵も味方も全員ゴールをいれて、4対4。

最後のひとりとなりました。

先行は対戦相手。ズバン!といれてゴール。

次のうちのキッカーがゴールすれば、残りのメンバーが登場してPK続行。

ゴールしないと、うちのチームの負けとなります。

 

これで入らないと、最後息子が打つのかー。危ないなー。頼むー、これを入れて息子の前で終わらせてくれー!!と思いつつ見ていると、ピッチ上でボールをいそいそと準備する、うちの息子。

 

 

隣であぜんとする妻。

口が金魚のようにパクパクしている私。

 

 

ええー!!

マジか!!!

最後じゃねーの?間違いじゃねーの?

 

 

妻が「え?え?なんで蹴るの?最後じゃないの?大丈夫なの?」と私の腕をブンブン振り回します。

 

そんな私たちをさて置き、ボールをそっと置いて後ろに助走距離をとる息子。

 

 

妻が「あああー、もう見てられない!!!」と半狂乱です。

 

 

チームメイト全員が肩を組んでシュートを見守ります。

応援の親たちも固唾を飲んで見守ります。

 

ピピーと主審の合図が鳴り響き、息子が走り出します。

 

 

 

バシュンというボールを蹴った音と、バスッというキーパーがボールを彈く音。

 

 

ボールがゴールの外に転がっています。

 

 

ピピーという試合終了の笛と、うなだれる息子。

泣き崩れるチームメイト。

 

 

 

半泣きの準優勝の表彰式を終え、車で息子を待ってると

 

 

「いやー、やってしまった。いやいや、まいったね」と笑いながら息子が登場。

 

「いやーボール取られちゃった。失敗、失敗。あはは」と車に乗り込み、出発。

 

 

かける言葉をどうしようかと考えているうちに、後部座席の息子が声を出して泣き始め、それはそれは長い間続きました。

 

私は息子に何か言うのが、すごく薄っぺらい言葉に感じて、カーステレオでかかっているFUNKY MONKY BABYの音量を上げるくらいしかできませんでした。

でも、勝負事でこんなに泣いてる息子は初めてで、すごく印象的でした。

 

その後、チームは優勝を繰り返し、チーム創設以来の最強チームと言われるまでになり次の年、全国大会に出場するまでになりました。

 

いろんな勝った試合や息子が活躍した試合を見てきましたが、一番息子の成長を感じたのが、このPKだったのを思い出すのです。

 

サムライブルーの試合が終わったのは午前3時。

こんなに夜更かししたのは病後始めてです。

次の日も通常通り、仕事をこなし無事帰宅。

 

妻が「眠かったでしょ?」と言ってきたので

 

「えー、戦いの前からタフな試合になるっているのはわかってたので、マイボトルにコーヒーとお茶っていうダブルでカフェインを取り入れながら、うまく押さえ込むことができたと思ってます。集中も途切れずうまく仕事運びもできて、いい結果に繋がったと思います。今日はゆっくり休んで、また明日から準備できればと思っています。今後も応援お願いします」と答えました。

 

妻からはブラボー!をいただきました。