がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

ガタガタの呪い

 

「50になった途端、ガタガタっと体が衰えてくる」

 

と人生の先輩たちに散々言われ、とうとうその世代に私もなりました。

 

戦後の高度成長をやり遂げ、バブルの激動の日本を乗り越え、数々の戦場を生き抜いてきた接待まみれのプヨプヨお腹を見ながら、

 

「それは、あなただけの話では?」と言いたいところをグッとこらえて、曖昧な相槌をついてた若かりし頃。

 

当時、話を聞いてる時はまったく想像ができなかったですけど。

今になったらわかります。

 

先輩、私、ナメてました。

先輩だけの問題じゃありませんでした。

私にも漏れなく訪れました「ガタガタの呪い」。

 

私も大きな病気を経験し、そっちばかりに気を取られていましたけど。

よくよく考えてみれば、他にも調子が悪くなる可能性があるのは至極当然。

気がついてみれば私も様々な病院を行き交い、御朱印の様に溜まるお薬手帳の処方箋。

 

呪いは容赦なく私に直撃したのでした。

プロローグは定期的な経過観察の検査。

 

 

腫瘍摘出手術から1年毎にいつも行っているPET検査。

通っている病院より性能がいい大学病院の検査機器で行うので、転移の有無を調べられるほか、他にも色々な画像が撮れる優れものらしい。

 

結果をドクターから「まったく問題なし。経過3年でこれは有望ですよ」と診断を受けます。

はい、良かったですーと応えていると、

 

専門機器ではないので公式な診断ではないけどとドクターが前置きしつつ

「がんとは関係ないけど、やっぱり食道にはヘルニアがあるようだね」と検査写真をペンで刺すドクター。

 

「ヘルニアですか?」

 

「食道裂孔ヘルニア。前回も逆流性食道炎の症状あったでしょ。最近は?」

 

「薬が効いてるのか症状はないです。一応来週胃カメラやる予定です」

 

「ん。私の専門外だけど、そのほうがいいね」

 

正式な病名は今回初めて聞いたなぁと思いつつ、診察後会計待ちで病名を検索。

どうやら加齢で胃が押し上がり胃の一部が食道にはみ出てしまうことらしいです。

「自然治癒することはありません」と衝撃的な一文。

ううう、原因が加齢とは「ガタガタの呪い」恐るべし。

 

 

1週間後、胃カメラ検査。

 

昨年の胃カメラでは結構グイグイ、カメラを入れられたなぁ、容赦なかったなぁ、嫌だなぁと思いつつ受診。

 

オエッ、オエッと涙と鼻水と唾液にまみれ、背中をさすってくれる小太りの看護師の男性に本気で好きになっちゃうくらい身を委ねながらも無事終了。

 

診断結果は「まぁ、大きな問題もなく特に以前の検査と変わってないね」とドクター。

ヘルニアの検査というよりは、転移の検査的な意味合いが強いようで、ドクターからは

 

「これからは毎年、胃カメラやってもらえると、こっちも助かりますね」とのご提案。

 

私を思っての毎年という提案にありがたさと正直、さっき体験した体液にまみれた検査中の私が走馬灯の様にフラッシュバックして、これからずっとと思うと気が滅入るので、絶食の検査後になにかご褒美をもうけようと和菓子にするか洋菓子にするかに思いを巡らし正直、それ以降のドクターの話は覚えていません。

 

 

数日後。

右耳の不調。

 

「あれ?右耳がボワーッと音がして聞こえない」

 

全ての音がマイクのハウリングのように耳鳴りを起こし、四六時中耳鳴りが聞こえてる。

ありゃー、再発したなぁと以前にも同じ症状に遭ったので迷わず耳鼻科を受診。

 

「前にもなったんですけど、また聞こえなくなりました」とドクターに伝え、

 

「んー、またですねぇ。原因はストレスかなぁ?」とメニエール病突発性難聴の原因であるストレスとの関連性に悩むドクターに、実は調子悪くなる前日に仕事のイライラからiPhoneの音量マックスでイヤホン越しにB'zのウルトラソウルをリピート再生していたなんて、とても言えず

 

「…そ、そーですね。仕事忙しいからなぁ…」とそんな仕事も忙しくないくせに、蚊の泣く様な声で誤魔化しながら、もはや若かりし頃のように爆音で音楽を聴けない体になってしまったことを思い知らされました。

 

爆音で音楽聴くのは、私のストレス解消法のひとつだったのになぁ。

これも出来なくなったのは結構ショック。

新しい解消法を見つけましょう。

そして羽ばたくウルトラソウル!

 

 

ある日の朝。

左肩に違和感。

 

あれー関節痛めたかなぁ、筋肉痛かなぁと前日の筋トレ追い込みすぎかと反省しつつ1日を過ごすも、翌日には腕が上がらなくなる状態に。

 

 

あれ?

これはひょっとして、いわゆる五十肩というやつか?

 

というセルフ診断により整形外科を受診。

 

同年代くらいのナースの問診に「もしかしたら五十肩かもと思いまして」と伝えると、カルテの年齢を見てお互いに無言でうなずき合います。

吹き荒れる共感の嵐。

「ガタくるヤツは大体トモダチ」(DragonAsh風)

 

ドクターが関節技の様に腕をひねり上げて「これ、痛い?」と聞かれ、

これ痛くない人いるのかなぁ?と思いつつ「痛いです」と答えます。

 

診断結果は原因が筋トレか五十肩かわからないので、とりあえず投薬で様子見ということになりました。

 

毎朝飲む薬を見て、毎日薬を飲むという行為を自分がする年齢になったんだということを改めて実感させられながら、今日もなんとか過ごしてます私。

みなさんも呪いにはご注意を。