がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

普通って大事

 

 

恋だと思うんです。

 

 

時々、きゅうんって胸を締め付けられるんです。

急にドキドキするんです。

クラっとするほどなんです。

胸が苦しくなるんです。

 

 

どうしよう。

妻も子供もいるのに。

こんな気持ちになるなんて。

ここまで自分の気持ちが表にはっきりでるなんて生涯で初めて。

運命の出会いです。

ディステニーです。

お昼のビールと餃子くらいドキドキの出会いです。

 

 

 

ただ唯一の疑問は、相手が誰だかわからないのです。

同じ会社のあの子?

通ってる病院のナースさん?

 

も、も、もしかしてドクター?

 

とうとうリアルおっさんずラブやっちゃうー?と思いつつ、先日の24時間心臓モニタリングの結果を聞きに病院を訪問です。

 

kazuthink.hatenablog.com

 

 

 

どうしよう。この胸の高まり。

トイレットペーパーが残りわずかを知っているのに、あえて交換せずに挑むあの感じ。

我慢できないオナラを音が出ないことを祈り一か八か放出するあの感じ。

家族勢揃いで茶の間で洋画を観て、やけに音がエロいラブシーンで無言になるあの感じ。

 

 

今日はなにか人生を変える出来事が起きそうな予感です。 

 

 

待合室から名前を呼ばれて診察室へ。

若いドクター、今日はなんか一段とイケメンに感じます。

 

禁断の恋の始まりです。

 

私の赤裸々な24時間のスケジュールと心臓の心拍数を、そんなジロジロみないでー!

風呂のとこで想像したでしょー!

寝るのとこでイヤらしいこと考えたでしょー!

私のハート(心臓CT映像)を覗き込まないでー、いやーん恥ずかしい!

 

と、女子ならハラハラドキドキなんでしょーが、こちらは人生経験豊富なアラフィフのオヤジ。

大人の余裕をみせつけ、淡々と日々の状況を説明し、それに答えるドクター。

 

 

あらかた説明が終わり、お返しにといわんばかりにドクター宛に書きためたラブレターのごとく、毎日測った血圧を書き留めた紙を天高く護符のようにばら撒きます。

 

はいはいまだ出てきますよーと手持ちのバッグから浪速のマジシャンのように紙切れをドクターに放り投げる私。

 

「ふむふむ・・・」と山盛りになった紙切れを読みながら一息つくとドクターが言う。

 

 

 

「で、本題なんですけど」

 

 

 

!!・・・告白ですねっ!

 

 

はいっ。待ってます。キス待ち顔で待ってます。どーんと受け止めます。

ドクターが田中圭役ってことですよね。ってことは私、吉田鋼太郎役ですよね。

いやーまあ私、あんなワイルドじゃないですけど。

わかりました。頑張ります。

精一杯努めさせていただきます。

 

 

 

「検査の結果ですが・・・」

 

 

 

ドキドキ。

 

 

 

「っとその前に・・・あ、今なんか症状あります?」

 

 

 

焦らすー!焦らすー!

展開もったいぶるー!

その手があったかー!!

ドクター結構、やり手ー!!

年下なのに手玉にとってるー!完全にいま、主導権握ってるー!

結構ドSなんじゃーん。結構遊んでんじゃーん。

 

 

 

 

症状を聞かれ私は体に表れた最近の初恋傾向をカミングアウト。

 

 

この症状は「恋」ってことですよね?

 

 

名実ともに春がきたってことなんですよね?

 

 

ドキドキの原因はドクターの可能性もありってことなんですよね?

 

 

うおおおぉおおおと一人盛り上がっていたところに、ドクターから一言。

 

 

 

 

「モニタリングの結果は、まあ普通」

 

 

 

・・・。

 

 

 

普通。

 

 

 

異常ありでも、異常なしでもない。

 

普通。

 

まあ異常なしなんだろうけど。

なんなんだろう、このせっかくのブログネタを逃した感。

そこはかとなく漂うやっちまった感。

なにかをやり損ねたような手放しで喜べない感。

 

 

「で、で、ですよねー」って言うしかなかった、私。

口パクパクしてた、私。

エサに飢えてる鯉みたいだった。

いっこく堂の人形みたいだった。

 

 

「じゃあ、2ヶ月後まで経過観察ってことで。ちょうど肺がん1年検査も同じ月ですし」

ということで、診察と私の恋は終了。

 

 

なんだかんだで私、無事普通になりました。