がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

圧力の使い方

 

 

「もう限界じゃないの?」

 

 

風呂あがりの妻が髪をタオルでガシガシしながら、私に言いました。

 

 

「そうだねぇ」

 

 

それですべてがわかってしまうのは夫婦の絆か、はたまた我が家の特殊な風呂事情の為か。

 

 

浴室を使用するたびに起こるガンガンっていう何かを叩く音と時折聞こえるウグッっていう呻き声。

 

隣近所に通報されない?

 

やばいことが風呂で行われてんじゃない?

 

様々な疑念渦巻くサスペンスが沸き起こる我が家の風呂。

 

 

その犯人は?

 

 

 

ズバリ、シャワー。 

 

 

 

我が家のシャワーって暴れん坊なんです。

 

 

 

水圧がすごいのか、水出る穴が多いのか、よくわかりませんが、シャワーをするたびにうちのシャワーヘッドが暴れるのです。

 

もうすごい。なんか怒り狂ったキングコブラみたい。

 

ヘッドを左に右にと振り回しながら、浴室狭しといわんばかりにお湯をかけまくりながらの大暴れ。

 

 

いざ髪を洗い流そうとシャワーにした瞬間、まさしくシャーっていいながらシャワーヘッドが暴れ回り、シャンプーの泡で視界不良になっている私をいいことに、ガンガン浴室の壁にシャワーヘッドが激突しながらホースをウネウネさせています。

 

そんな暴れん坊を、どじょうすくいのように顔面にお湯を大量に浴びながら捕まえるのです。

もはや浴室全方位が水浸し。

上も壁もビショビショで湯気が天井からぽたりと背中にレベルじゃありません。

 

 

 

壁にシャワーを固定して、両手で髪を洗うなんて夢のまた夢です。

 

固定しててもシャワーにした瞬間、シャーっていう音と共に、シャワーヘッドが跳ね上がり、

 

 

私のおでこにガンッ!

 

はぐあっ!!

 


バスタブにガンッ!

 

 

私の脇腹にガンッ!

 

 

ぐふぅっ!

 


床にガンッ!

 

 

私の足の小指にガンッ!

 

 

あぐあっ!

 

 

かなりのあいたたたって感じになるので、ガシッと手で掴んでシャワーすることになるのですが、最近あまりのガンッ!の衝撃で、シャワーヘッドの連結部分からそれはそれは綺麗な一直線のレーザービームのようなお湯も噴き出る現象が発生。

 

髪を洗ってんのに、目にレーザーが直撃する獰猛さ。

髪を洗いながら、顔も洗えるまさかの2way。

もうシャワーの最終形態。

シン・シャワーヘッド。

 

 

これじゃあ、さすがにリラックスタイムどころか、ジャングルで蛇と戦うサバイバル体験の如しというところで、妻から「そろそろなんとかしましょう」という忠告なのでありました。

 

さっそく休日ホームセンターにいき、上は2万円、下は700円のシャワーヘッドたちを眺めます。

 

上級クラスは銀メッキのキラキラしたお顔で、水圧調整により節水効果25%!、高級感に溢れどんなバスルームにも対応!!などの謳い文句がデカデカと。

 

でもね。

その節水効果がアダで、うちのキングコブラ誕生になったんだよねということも私は経験済み。

実はシャワーヘッドの交換はこれで3回目。

そんじょそこらのビギナーヘッド交換野郎とは、訳が違うのです。

 

 

今暴れているうちのキングコブラも最初は鳴り物入りできたものです。

 

手元でシャワーオンオフスイッチ付き!

ノズル改良による節水効果!

モダンでスタイリッシュな飽きのこないデザイン!

 

よっ!社長!ばりにヨイショされた接待文句につられ、シャワーヘッドカーストのなかでも中級シャワーヘッドをたしか3千円くらいで買ったものでした。

 

買った時は、すごいお澄まし顔でいたくせに。

自分、いろんな機能ついてるんですって顔してたくせに。

ちょっとデキる的な転校生って感じだったくせに。

最初の頃はこうじゃなかったのに。

いつのまにか気付いたら、まさかこんなやさぐれヘッド人生を送ろうとは。

 

 

うちの子に限って。

うちの教育がダメだったんでしょうか。

期待しすぎちゃったんでしょうか。

 

 

その教訓を胸に、今回はちゃんと700円の一番、おとなしそうな子を我が家に迎え入れました。

 

 

ザ・シンプル。

 

もうヘッド自体が断捨離してる。

余分なものは一切なし。

惚れ惚れするくらいの曲線のみ。

 

付いてるものは水出る穴とそれを覆うヘッド。以上。

 

いさぎよい。もう削れるとこまで削ってる。

 

謳い文句も、シャワーで節水!みんなで楽しく!!って、書くことない感がヒシヒシ伝わる。

 

いい。こういう子、待ってた。

 

 

 

その日の夜、さっそくシャワーヘッドを取り付け、おとなしい性格を確認。

 

せせらぎのような水圧。

 

打たせ湯?くらいの優しさ。

 

以前のような突き刺すほどの圧なんて、微塵もありません。

 

 

 

人間もシャワーも圧はほどほどに。