がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

パーリーピーポーとタタリ神

 

現代のエンタメ業界の若手メンズときたら。

 

 

なんか、もう毛穴がない。

肌が綺麗すぎてマネキンのよう。

片や私は月面クレーターのように歴史を刻んで、48年。

自分の二十歳の若さいっぱい溢れる時期と比べても、今の身なりの進化は驚くばかり。

 

 

 

教科書の載っていた古代人を、サルみてーと笑ってた若かりし時代の自分が、もはや世間のヤングからは笑われる側に追い込まれているほどの世の移り変わりの早さを実感します。

 

 

そういえば入院していた病院の看護師さんもイケてた人が多かったなと。

 

 

最初の肺がん手術のときもお世話していただいたのが20代前半とおぼしきイケメン看護師さん。

 

ピシッと分けた七三ヘアーと、ベビーフェイスの割りになかなかマッチョな体がナース人気ランキング上位を感じさせるヤングメンです。

 

やっぱイケてる奴がいればナースも、その日はテンション上がり目になるのでしょうか?

 

あー、○○くんと夜勤一緒だー!!

もーズルいー、アンタばっかりー!

えへへ、今日こそアタックしちゃうもんねっ!

 

みたいな。

いーな、楽しそうだなーと思いつつ、ヤングメンに手術のための注射を手首にされる事になりました。

 

注射の準備をされながら、ふと気づきます。

この病院って名札は写真付きなんですよね。

まあヤングメンの名札にも、名前と写真があるわけですよ。

 

あれ?と。

写真の顔がね。

なんかー、まあなんてーか、そのー

 

 

遊んでるよね?

 

ヤンチャしてたよね?

 

EXILEのオーディション受けた?

 

憧れの人ってローランド?

 

 

 

みたいな。

 

いや、誤解だよね。偏見だよね。

ごめん。本当謝る。

 

いま台風来てんの?っていうくらいウェーブがかった髪とか

 

マイケルジャクソンなの?っていうくらいの前髪とか

 

綺麗なアーチを描く細い眉とか

 

耳になんかつけてる痕跡が2つあるねーとか

 

お目目の色がシベリアンハスキーしてないかなーとか

 

 

色々思うところはあるだけで。

ごめん。ちょっと出しゃばった。

お洒落だよね。許容範囲だよね。これぐらい普通だよね。

 

 

でも今、目の前で注射をしようとしてる人とは同一人物には思えない。

 

 

行き違いの兄弟なのかなーみたいな。

 

弟は看護師やってるけど、写真の兄は学費稼ぐためにホストやってんのかなーみたいな。

 

生き別れだったけど面影あるよねーくらいの変貌ぶり。

 

まあまあ若い時は色々あるよねって事で、気を取り直して消毒してもらいます。

 

 

ヤングメンは

「これ痛いんですよねー。でも必要なんですよー」

とか言いつつ、右手首にブスっといくんですけど、

 

ほら私、注射難しい人なんで。案の定、失敗なっちゃって。

 

「いやーすいません。もう1回。痛いんですよね。わかります。わかるんです、痛いの。やーすいません」

 

で、またブスっと。

 

「練習でね、うちらも新人に何回も刺されるんですよ。痛いんですよね」

と看護師先輩あるあるエピソードを披露。

 

俺も大変なんっすよと聞いてくださいよっていう雰囲気になって、

私も人生のちょい先輩を演じて、うん、うん、大変だねぇっていう感じになって、

でも頑張りますーみたいになってくれて、

 

「なんかあったら、なんでも言ってくださいね」って宣言してくれて。

 

やべー、チョーいい奴じゃんと。

 

頑張ってるんだなあ、外見も内面もかっこいいなあと。

 

 

 

でもチャラ男なのかなー。

 

パリピなのかなー。

 

血管細くてPON!PON!PON!

 

とかって、言ってくれないのかなー。

 

 

と思いつつ、耳に2つあるピアス痕をジッと眺めていたらいつの間にか終わりました。

 

「じゃあ手術頑張りましょう!」と颯爽と病室を出るヤングメン。

 

 

なんかいい人オーラが伝わって。

 

今時の若いモンは間違いなく、私の若い頃よりも100倍しっかりしています。

 

 

 

でね。入院してると、薬剤師の方が飲んでる薬の説明をしてくれるんですけど。

 

その説明をしてくれるメンズがね。また若いヤングメンなんですけど。

 

 

なんていったら言いかなー、んー、まあしいていうなら

 

ドラマの主人公が着替えるロッカーシーンしか出番がない同僚役くらいな純朴さを持ち合わせてる人で。

 

すごい素朴なんですけど優しそうで。

 

多分薬剤師やられている方なんで、メッチャ頭もいいと思うんですけど。

 

 

すごい人見知りみたいで。

 

 

もう「失礼しまーす」から声震えてるんですよね。

 

もう患者に何言われるのかビクビク感がこっちにもヒシヒシと伝わるんですよね。

 

一生懸命、成分書いた紙を持って薬の説明してくれるんですけど。

 

「ここに書いてある通りー」って言って紙をみせてくれるんですけど。

 

手が震えて見せてくれてる紙がパタパタしちゃって、文字がラピュタ文字くらい何書いてあるか見えてない。

 

風の谷の大ババ様くらい、何も見えない。

 

ラピュタムスカくらい、目をやられてる。

 

 

ただ紙に書いてあることを一生懸命読んでくれるんで、話は通じます。

 

「うん、うん」うなずく私ではあるのですが、さっきからね、スゴイ無言の圧を感じる。

 

明らかに病室前の廊下付近で先輩が聞き耳立ててるのが気配でわかるんですよね。

 

 

たまに通りすがったナースさんと先輩がすんげー小さい声でやりとりしてんのが気になって、薬の説明よりも、先輩が下す彼の評価が気になっちゃって、薬の説明が全然耳に入ってこない。

 

で、彼が「し、し、質問ありますか?」って聞くんで、ここは先輩の前でポイント稼いでよって思って、軽い質問を投げかけたんですよ。

 

「あーこの薬って、いつぐらいまで飲み続けるんですかねー」

 

はっきりした期間を答えても正解、分かんなくてもドクターの診断しだいですかねーで正解、どっちに転んでも不可はないと、こりゃーラッキー問題だろうと思ったんですけど、彼が思いの外動揺しましてですね。

 

すごい紙を読み漁るわけですよ。

 

すごい勢いでカルテとか見始めるんでけど、「あ、あ」しか言えなくて。

 

 

あー、ヤバイと。

私のせいで先輩の心象悪くしちゃうと。

 

地雷踏んじゃったのかなーと。やっぱ医療の世界では軽々しい質問はNGなんだと。

 

いやー大変申し訳ないことをしてしまったと。

 

反省しつつこりゃー早めのフォローが必要だと思いまして、

 

 

「まあ、やめるって言われた時が終わる時ですかねー???」

 

 

って一休さんのトンチみたいな、名言ぽいけど当たり前みたいなことを言って、絶妙なセンタリングをあげたつもりだったんで、あとは彼の「そうですねー」っていうシュートを決めてもらう予定だったんですけど、

 

 

「そ、そ、それはわからない」と彼。

 

 

えー!シュート打たないのー!!と。

打ってよー!!と。

いいパスだったじゃん。

メチャクチャ、打ちやすいふわり球だったじゃんと。

 

 

病室前の先輩がちょっとイラついてる気配がわかる。

 

 

紫色のオーラが私には見えてる。

美輪さんばりに見えてる。

江原さんばりに透視できる。

 

 

見えない?ほら、こんなにダダ漏れてるよー?

乙事主(おっことぬし)のタタリ神くらい溢れてるよー?

先輩の目の色が王蟲(オーム)ばりに攻撃色の赤に変わってるよー?

巨神兵ばりに口あけてるよー?もう少しで焼き尽くされるよー?

 

そんな私の余計な心配をよそに彼からキッパリ

 

「こ、こ、これは持ち帰って確認します」

 

と妥協しない真面目な誠に誠意あるご返答をいただき、後ほど「診察結果次第です」とありがたい返答をいただきました。

 

 

若いのにいい加減な対応で誤魔化さない真摯な対応。

自分の体に染み付いた適当人生を反省しきりです。

 

 

若いって、いいなあ。みんな真面目で素晴らしい。

私も負けじと大人の魅力全開放で頑張ります。

 

 

スタッフさん、みんないい人でお世話になりました。