がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

はじめの一歩

息子の引っ越し前夜。

 

 

積めるだけの荷物を車に積め、準備を整えます。

 

一人息子の旅立ちに妻は心配性スイッチを作動、地震の多い今日この頃に備え非常用飲料水やカンパン、よく食べるふりかけを持たせる用意周到ぶりです。

 

出発前夜は偶然にも私の誕生日。

ハッピーバースデー&壮行会を焼肉で開催、ハフハフしながら黙々と食べる私たち。

そう、食事をする時あまりお喋りしない我が家。

 

肉を焼き、ガツガツ食べ、肉を焼き、むふーんと鼻に抜ける肉の匂いを堪能。

 

開始30分後には、もう満腹で「じゃあ、ごちそうさま」という始末。

食事とおしゃべりを楽しむイタリア人には到底なれそうにありません。

 

翌日。朝7時出発、目的地まで4時間のドライブ。

 

がん治療をして疲れやすくなったこともあるけど、運転は嫌いじゃないので意気揚々と出発進行です。

 

ワゴン車内部は荷物で大変なことになっています。

2列目に座ってるはずの息子の姿が荷物で見えません。

 

「引きこもってるねー」と私が言うと

「これはこれで落ち着くかも」と息子。

 

車がアパートに到着し、ワラワラと荷物を下ろします。

何もない部屋、硬いフローリングの床で途中買ったハンバーガーを食い作業開始です。

 

ひたすらカラーボックスや棚を組み立て、車の運転をして、翌日の夕方には何とか形になりました。

 

妻は息子にあーしなきゃ、こーしなきゃと一人暮らしをする人間としてのアドバイスを矢継ぎ早に指南、息子は言われるたびに「わかった」と答えるけど、こんなに言われてたら最初何を言われたかもうすでに忘れているはずです。

 


チャラララッタッターン!

息子はレベルアップした!社会で生き抜く人間としての「スルー返事」を習得した!

 

妻は別の意味で人間レベルアップに貢献しています。

 

 

 

立ち会い出産で私がへその緒を切り、生まれたばかりの息子を

 

「じゃあお父さん、抱っこして病室で待ってて」

と言われた時。

 

分娩室から病室まで何が何でも守らなくてはと思ったあの時、父も子育て一年生だった。

それがいまや、あの時の子供は一丁前に、妻よりも大きくなり一人暮らしをしようとしている。

 


保育園の運動会で一等賞を喜んだあの日。

戦隊モノを観た後の取っ組み合い。

自転車を補助輪なしで乗れたあの瞬間。

サッカーのPK戦で息子がはずし、試合が負けた時。

白木のカウンターがある寿司屋でマグロを食べた時の顔。

 

 

本当にあっという間です。

妻、息子、これからも元気で頑張ってくれ。

 

父は帰り道の高速パーキングエリアで食べる生クリーム大福のことで頭がいっぱいなのだ。