がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

魚釣りで忍耐を学びました

 

 

妻から「今日の晩、なに食べる?」とメッセージを受信。

私は「寿司に行こう」と送りました。

 

ワオ、なんか大人な会話。

寿司って簡単に言える自分、すっかりオトナです。

 

魚登場回数がめっきり少ない我が家なので、久しぶりに魚が食べたいのです。

妻もすぐさま「了解!」の返答。

 

 

字ヅラではセレブな雰囲気ですが、二人が目指すは「くら寿司」。

 

回転寿司万歳。もう充分満足。

 

カウンターのお寿司屋なんて「今日はどうしましょ?」と聞かれてオロオロ、お会計が気になり過ぎて帰り際までハラハラするディズニーも真っ青なアトラクションはコリゴリです。

 

無数の皿が回る、夏の渓谷に流れる渓流の如く、その規則的な優美な流れを満喫しながら、血眼になって席にある寿司タブレットを操作する指は休めない自分がリアルな私なのです。

 

お店に到着して、さっそく着席するや否や、タブレットで寿司を注文。

私は「さば」、「アジ」などテカリものからスタート。

妻は「とびっこ」、「いくら」の魚卵スタートです。

 

次から次へ届く寿司を無言でモシャモシャと食べ続けます。

 

次の私は「えんがわ」、「サーモン」など脂ののった魚で中継ぎ。

妻は「ほたて」、「とうもろこしのかき揚げ」とサイドメニューを入り混ぜます。

 

 

モシャモシャ。

 

 

「さぁ、次は何を食べよう」と私は迷いながら定番の「まぐろ」、寿司屋で必ず頼む一番好きなネタ「かんぴょう巻き」でお腹を落ち着かせます。

 

妻は「うに」、「えび」のネタをチョイス。

 

 

ん?

 

ちょっと待ちなさいよ。

 

「何かした?」と妻。

 

 

何かした?もないでしょ。ありえないでしょ。

冒涜でしょ。屈辱でしょ。恥辱プレイでしょ。

ここどこかわかってる?ここで何食べる?

ステーキ食べないでしょ。しゃぶしゃぶ食べないでしょ。お寿司食べるでしょ。

お寿司の定義ってあるでしょ。昔から脈々とあるでしょ。

僕らが受け継がないといけない食文化でしょ。

 

 

「え?何?何?」とうろたえる妻。

 

「あなた、回転寿司に来て魚食べてないでしょ。注文してるの魚卵とか貝とかエビとか、魚以外のものばっかでしょ。お寿司って基本、魚食べるでしょ。魚とご飯、それが寿司でしょ」

 

「うあ、本当だぁ。よく気づいたねぇ」と驚く妻。

 

「あなたの注文履歴が5歳児レベルだから。見た目は大人、味覚は子供の名探偵コナンばりの逆転現象になってるから」

 

「魚って生臭いんだもん」

 

ハァー、もうこれだから魚ビギナーは困る。

こうなったら美味い魚を食べさせたい。

一口食べて唸らせるぐらいの魚を食べさせたい。

 

釣り好きだったうちの父親がまだ生きててこの場にいたら、寿司も食わないで席を立ち上がり「これから釣ってくる!」と車を3時間飛ばして自分の息子の嫁のために、採れたての魚の刺身をこれでもかという量を食べさせているに違いない。

 

 

新鮮な魚は全然生臭くないから。

つーか「くら寿司」の魚も充分美味いから。

幼少期から釣り好きパパの採れたて新鮮刺身で舌が肥えている私。

魚の食べ方は骨一本の処理まで細かく指導され、どんな鬼教官よりも厳しい我が家の食卓を見せてやりたい。

 

こうなったら父の形見である「釣り竿」を片手に新鮮な魚を釣ってくればイイんでしょうが、釣り好きパパに早朝から真っ暗になるまで何時間も海に拘束されて「家でゲームで遊びたいのに無理やり釣りに付き合わされる息子」だったトラウマで、釣りが嫌いになってしまったのは、うちの父親の生涯の誤算に違いない。

 

なので「食べさせたい」気持ちはあるが、「じゃあ釣って食べさせてやる」までは残念ながらいかない。

 

だから、私は妻に

「次はカニマヨとオニオンポテト、食べる?」と勧めるのです。