がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

きょうの料理

めっきり暖かくなって春。
フガフガと布団から滑り落ちて、コーヒーを淹れてボーッとします。
今日は妻は仕事で、息子はまだ寝ている。

洗濯だ、洗い物だ、と家事タスクをこなしているうちにお昼間近に。
昼飯は何にしようと考えていると、息子が寝起きで登場。

これからの一人暮らしに備え、料理を覚えなければとの危機感からか
「今日はパスタの作り方を教えてもらいたい」と。

「パスタといっても何系?オイル系のペペロンチーノとか、クリーム系のカルボナーラとか」と私が聞くと

「なにチーノ?」

「ペペロンチーノ」

「なにそれ?」

この春、大学生というのにペペロンチーノを知らずして今まで、この激動の外食産業真っ只中な世の中をよく生きて来れた。
よく言えばピュア。
悪く言えば世間知らず。
親がろくなモン、食わせてねぇのか。
ごめんなさい。
白状するが昨日の夕食で出したちらし寿司に「カニをたくさんいれたよ」と言って食わせたが、あれは刺身売り場に売ってあった本物っぽいカニカマだ。

でも君は「カニがこんなに入ってるなんて」と喜んでいる顔を見て父は何も言えなかったのだ。
とりあえず君は格付けチェックで、すでに二流決定。
まあ、君のその年齢でカニやイタ飯を語られると逆に嫌だから、良しとしよう。

一人暮らしで簡単なパスタはと考えて
「まあ、手っ取り早くナポリタンにしましょう」と提案し、息子も承諾。
では、我が家のナポリタン後継者よ、準備に取りかかろうと鍋やら食材やらを二人で準備しながら、何故にパスタなのか。色気付いて女の子受けするメニューを覚えたいのかと尋問。

息子は「前回、チャーハンだったから」と返答。
そう、あれは1ヶ月前の我が家の料理教室、記念すべき第1回目チャーハンの巻。
ご飯と卵とネギと残り物の生姜焼きで作った。
マンツーマンで手取り足取り教えたのに。
息子もどうだ!と言わんばかりに得意満面で出来上がりを迎えたけど。

あんなしっとりしたチャーハン初めて食ったから。
もう炊き立てのご飯より何故かしっとりしている。
なんならお粥なの?リゾットなの?ってなってる。
何故なんだろう。炒めてるのに。水入れてないのに。

フライパンに卵入れてー、ご飯入れてー、はい!切るようにご飯を混ぜる!って教えて
はい!はい!はい!と言いながら、しゃもじを切るのはいいんだけど。

混ざってない。
全然、ご飯混ざってない。
同じところを、しゃもじでカンカン叩いてるだけ。
なんかYOSHIKIになってる。スゲー、フライパンをカンカン叩いてる。
髪振り乱してるのに、カンカンいってるのに、ご飯まったく無傷。

中華は油だと、揚げ物するのかってくらいに油をいれていたことも判明。
おらぁ町一番の酒飲みだぁと料理酒をドバドバいれていたことも判明。
そりゃあベシャベシャになるよね。パラパラはほど遠いよね。
もうパラパラじゃなくて、のりみたくなってる。
これで障子貼れる。
もはや粒が消えて餅みたくなってる。

まあまあ、まだ初心者だからってフォローしあってね。
ちょっと形勢逆転を狙って。
いい気になってフライパンあおってみたよね。

3分の1は周りにこぼれたよね。
残ったのはもう絶望的にラーメン屋のセットでついてくる小チャーハンの量だったね。

OK、OK。まあ最初はそんなもんだよ、息子よと。
せめて味で決めてやろうよと父は思ってね。
失敗しても、リカバリーできんだよ、料理も人生も。ってストーリーを組み立てて。
やっぱ親父ってスゲーっていう羨望を集めないとと思ったわけです。

「おし、じゃ塩かけてみよう!」

「OK!ラジャー!!」ってね。息子も元気よく返事してね、塩振ってんだけど。

御焼香してんのってくらい少ない。
貴重な砂金なのってくらい、量少ない。

日頃の気弱なチキン振りがいかんなく、こうゆうとこでバレる。
臆病になるなよと。もっと大胆にいけよと。男ならガツっといっちゃえよと再度、指導。

これぐらい?
と、耳かきでもすくえる量でパラパラ。

もう何も言うまいと、味見して自分が好きな味にしてくれたまえと大人の余裕でフォロー。
本人は味見をして、これで良しとまさかの決断。

まさかの追加なし。
食わなくてもわかる、味しないヤツやん。
ご飯の味、そのままのヤツやん。

その第1回目のチャーハンを二人で「まあ最初だから」を一生分言いながら食し、今回はリベンジを含んだ第2回目、お題はパスタというわけです。

パスタの茹で時間は7分。
7分のうちに食材を炒めておきましょうと準備のために食材を切る。
ソーセージはー、玉ねぎはー、とぎこちない手つきながら下準備終了。

今回息子は私が言うレシピをスマホのメモに打ち込んでいる。
鍋の水いれる、から食材の切り方まで。事細かくメモ。本気度が感じられて良し。

ではパスタを茹でます。時々パスタはトングでかき混ぜてと指示。

了解了解。と意気揚々な息子。

ジャジャッとパスタを鍋に入れ、はい!具材を炒める!時間は残り6分30秒。
時間と勝負だよ!はいスタート!

フライパンに具材を入れ込んでジャーッと炒め始める息子。
スマホに「パスタをなべにいre・・・」と打ち込んでいく。

「焦げる!焦げる!」と私。

あ!あ!と息子。

「パスタかき混ぜて!」と私。

あ!あ!と息子。

「ここにケチャップいれてー」と私。

「具材にケチャップ・・・」とスマホに打つ息子。

「焦げる!焦げる!」と私。

炒める具材、茹でてるパスタ、打ち込むスマホ
息子がもうお手玉してるみたいです。
千手観音みたいです。
動きだけは繁盛店の料理長です。

数々の修羅場をくぐり抜けて出来上がったナポリタン。
いざ、実食。
感想はというと、ケチャップとソースを発明した方。
おかげで我が家の食卓は救われました。
ありがとうございました。
とりあえずパスタにケチャップかけりゃあ、なんとかなる説。事実です。