がんになって日日是好日となるか

肺がんステージ3を宣告され、治療を続けるアラフィフの日常

散歩で人生の多様性に気づく。

がんの治療としては、肺がん手術、休養、その後抗がん剤治療となるわけですが、手術をしたあと休養期間にやっていたこと、それは散歩。

病人といったら散歩です。
というか、体動かすのに散歩くらいしかできないです。痛くて。
手術した後ですから。切ったところが痺れてきます。
それに息が続かない。もう、ちょっと歩いただけでハア、ハアです。
公園歩いてると、横を鳩がクルックー、クルックーと追い抜いていきます。

やっぱり体って動かさないとダメみたいです。
このままだと自分はスライムになってしまうと思い散歩をすることにしました。
平日の真昼間から、働き盛りの男が公園で散歩です。はかない人生が漂います。
時間が遅く感じられ、ああ空って青いなあとか、雲白いなあとか気づき始めて、ああなんか人生って捨てたもんじゃねえなとか、生きてるっていいねみたいな、いわゆる人生寄り道症候群のように日々のありがたさを痛感するわけです。

晴れた昼下がり、いつものように公園の外周をヨロヨロと散歩していくと、お子様連れの奥様が何組か遊具で子供と一緒に遊んでいます。

ああ、平和だね。

 

遠い目をして遊んでいる子供たちに目を奪われていると、奥様たちの視線を感じます。
明らかに私を見ています。というか、睨んでる?

なんか怪しげじゃない?
やべーやつなんじゃない?
子供食べちゃうんじゃない?

身もフタもない容疑ビームが目から出されています。
そうだよね、一見あんまり不健康そうに見えないしね。まあ今の時間、公園いるほうが不自然だよね。
多分、気のせいだとは思うのですが、このアウェー感なんなんでしょう。
公園デビューができない新米パパさんの気持ち、わかります。

しょうがないので、車に乗ってちょっと遠出します。
もはやちょっとしたドライブになっています。
なんなら畑とか広がる場所までいって、ひと気ゼロの畑のあぜ道を散歩します。

ああ、落ち着くねぇ。日本だねぇ。

あぜ道を歩いていると、ちょうど畑の収穫をしている方々が遠くに見えます。
秋だものねぇ、と遠い目で畑を見ていると、収穫している人が手を止めてこっちを見ている視線を感じます。この方々も明らかに私を見ています。

 

収穫泥棒じゃねぇ?
畑乗っ取る気なんじゃない?
悪徳不動産の地上げ屋で下見に来てんじゃない?

 

気のせいだと思いますが、もう気持ちが落ち着きません。このネガティブ妄想癖やめて。
おちおち平日昼間に散歩できる場所は、この日本にあるのでしょうか。

しょうがないので夜に散歩することにしました。
近所の公園は夜はひと気ゼロです。これなら視線を気にせずに散歩ができます。
真っ暗な公園をヨタヨタ歩きます。

 

公園で怖い幽霊とか見ちゃうなんてないよね?
なんかと変質者と間違えられないよね?
小学校の安全緊急メールに載らないよね?

自分で自問自答の末、速攻自宅に戻りました。

みんなと違うことするのって勇気いるんですね。
同調圧力のスゴさ、身に染みました。働いている方々、今日もお疲れ様でした。
働けない方々もお疲れ様でした、それぞれご苦労あるんですね。


人生それぞれなんですね。