病室にピーピーという機械音が鳴り響く中、右腕に点滴、左肺にはチューブ、お股には尿管という３本の管が繋がった状態の、まさにサイコな姿で手術後１日目を迎えました。
やっぱ手術って、大変なのね。
やっぱ体切るって痛いのね。
昔のサムライさんが見たら「これしきの傷！」って、傷口に酒を口からプシューってかけられて笑われるんですよね。これくらい日常茶飯事だったんですよね。
すいません日本男児なのに。これしきのことで弱音吐きまくりです。
手術後１日目。とりあえず昨日ほどではないけど痛みは続いていて、咳とか体に振動が伝わると、まぁまぁ痛みが走ります。もう動けないので、ひたすらベッドの上で過ごします。
テレビもスマホも見る元気はありません。管３本なので身動きが取れず顔も体もまったく放置プレイで、ひどい顔。
手術直後の寝不足のため、うつらうつらしながら天井を見て過ごす。時折、おしっこは管から、うんこしたくなったら、どうすんだろーと思いつつも
寝る、起きる、痛い、どうすんだろー、
寝る、起きる、痛い、どうすんだろーを繰り返して翌日へ。
翌日には、尿の管が取れて行動範囲が広がり、トイレ自由となりました。
この尿の管を取るってのが、男ならわかると思いますが、聞くだけでミゾミゾするわけですよ。いわゆる尿出るところに管通してんですよ。 想像するだけで背筋凍りますよ。入れた時は麻酔効いて記憶ないけど、抜くときはノー麻酔です。はいっ、じゃあいきますよーって軽い感じでいきます。
おいおい、どーなんのー！って心で叫んでるうちに、管は抜かれます。
なんか、ドロッという感触とジュゥンっていう鈍い刺激で取れます。激痛ではないので、これからご経験される方は安心してください。
体は痛いですが、ベッドから起き出してトイレや洗顔にと動けるようになり、スプレー式シャンプーなどを嗜む余裕もでてきました。ただ動きがおじいちゃんのようなスローモーション。
もはや顔を洗うのもロボットダンス。
歯を磨くのもパントマイム。
パンツ履き替えるのも一大行事。
そーっとね。そーっと。ゆーっくり動きます。
もはや触る、動く、全ての動作が自分にとっては電流ビリビリゲーム。下手にさわれば一触即発。
ビビリながらミッションをこなしていきます。そんななか、食事はお粥から白米に昇格。
内臓は順調に回復していることを教えてくれます。
ただ、お味噌汁や麺類などをすする動作は傷口に響いてしまい、食べ方がアメリカ人のように、すすれない食べ方になってしまいました。
手術から５日目で肺と点滴の管を抜くことになり、お医者さまと研修生とみられる賢そうな男性が登場。
「じゃあ、横向いてくださいねー。いいって言うまで息止めてね。胸水でちゃうから。はい、止めてー」
ゔぅっ。
なんか管抜いて、抜いた穴を手で塞いでる。ああ、なんか焦ってる。そこ、そこって言ってる。ああ、がんばれ研修医。そこっ、そこっ。
研修医が「はいっ、はいっ、うわぁ傷口綺麗だぁ」と思わず感嘆の言葉。
うっとり見てないで、早く貼ってぇ。息が…息が…
「はい、いいですよー」
プハァ。管が取れて久々の開放感。肺の管を抜いたところには大きなバンソウコウがペッタンこ。腕の点滴も取れて、晴れて私の体を縛るものはなくなりました。
「あと１週間を目処に退院を目標にしましょう」
とお医者さん。
ああ、もう少しで美味しいものが食べれる。シャバの飯が食えるぜ。食いたいモノはもう決まってる。ケンタッキー食いてぇ。すげ〜味濃い、油まみれの肉が食いてぇんだよ。待ってろよーケンタッキー。
「術後の経過は順調なので安心してください。あと術中に確認されたのが、がんがリンパに転移してる可能性があるんだよね。いま術中に採取したのを検査してるので、確定したらまたお知らせします」
ん？リンパ？転移？
ってーことはステージが上がるってことだよね。ん〜よくわかんないが、後でググってみよう。まずはケンタッキーだ。
今なら高畑充希ばりに言える。「ねえ。ケンタッキーにしない？」
ケンタ推し！もう一択！あのスパイシーな背徳感を我に！
ん〜楽しみ。
そういえば手術後、妻とのLINEで「手術している間、どれくらい待った？」と聞いたら５時間くらいとの返事を思い出した。そうか、転移があったから予定時間３時間半よりも時間がかかったのか。手術やるほうも大変なら、待つほうも大変だ。
まあ、検査結果が出ないことには、今更どうしようもない。それよりも、もう少しでケンタッキーが食べれる喜びで「転移かもしれないショック」のダメージはない。
とりあえず管が取れたことを今は喜ぼう。自由万歳。とりあえず今日は自販機まで遠征してカルピスウォーターで乾杯だ！
